《生命とは何か−「抜け殻」を介した習作No.1》
2023/8

 抜け殻を集めたのは久しぶりだ。今となって、セミの抜け殻を観察してみると驚いた。硬い殻のように見える体節が柔軟に動き、足の鉤爪は未だしがみつく場を探すように、触れる手に引っ付いてくる。抜け殻は死体のようであるが、そうではないようにも感じた。それ以上に、生と死が何かすらわからなくなってしまう。生でも、死でもない状態の、セミの抜け殻というものは、私にとって不思議な存在なのだ。
 ひとまず、まるで魂が宿ったかのように動かしてみることにする​​​​​​​

集められた抜け殻、動き出す抜け殻

《殻とエレベーターの近似》
 2023/9 
UHDビデオ
 命を有さない抜け殻。人々が乗る時間は1分にも満たないエレベーターという装置。  エレベーターは、階段を使わない対価として、見知らぬ人同士を乗り合わせ、特に何もすることもできないような短い時間を提供する場所である。  エレベーターに乗っている間、人々はまるで抜け殻になったような時間を過ごす。乗り合わせている人同士は互いに何も関係のない存在であるのだ。 又、エレベーターに乗っている時間は、何をするにしても短い。手持ち無沙汰となりポケットからスマホを出したころには、たいていの場合もう既に目的の階に到着している。  抜け殻製造機としてのエレベーター。そしてセミの抜け殻。それらの二つを組み合わせ、動きのベクトルを合わせてみる。
Back to Top