《Retrace》
インクジェットプリント,420×297mm|2024.5

本作品は撮影の過程を通し、空間と身体の関わりを想像・再構築しようと試みる。
佐藤時啓氏の写真作品《光―呼吸》シリーズの#22は、藝大の中央棟の階段がおびただしい光跡で埋め尽くされている写真だ。今回私はそこに赴き、同じ構図、手法で撮影した。そして、その手法で藝大の構内を彷徨い、様々な場所を上記と同じ手法で撮影した。

長秒露光で「光跡を写真に撮影し残すこと」とは土地と自身の身体性を結びつける行為だと思う。私は撮影を通してそれを強く実感した。長秒露光中に、ライトで周囲を照らしながら画角に収まる範囲内で動き回る。そして出来上がった写真を見ると、光跡がイメージの中で私の身体の代わりとなって存在し、腕の動きや細かい震えが光跡のゆらぎとなって現れている。

かつて佐藤氏が撮影した空間に身を置いていてさえも、個々の身体性の違いが光によって可視化され、得られるイメージは全く異なるものとなる。光に置換された身体性を、読み取り、想像し、構築し直してみてほしい。

※《光―呼吸》シリーズ#22|1988年(東京藝術大学上野校地にある中央棟の階段で撮影された写真)
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